2007年02月15日

新国立美術館 ~共生~

1月30日にオープンしたばかりの、新国立美術館。

東京にいた頃、毎日渋谷から青山霊園を通って通勤していたので、
建築中の様子をずっと見守っていたものの、完成後に行くのは初めて。

正面から入ると、いきなりの圧倒的なガラスの建築物。
建築は黒川紀章さんで、
彼の彫刻的な建築スタイルがそのままに、壮大に生かされていました。


実は、黒川さんの建築と聞いて、
行きたくなったのも理由のひとつ。
彼の思想の中から生まれる堂々たる完全体の建造物は、
見るものに美しさのため息をこぼします。

黒川さんは1960年頃からメタボリズムを中心とした
活動をされていて、現在にまでも
都市と建築への研究は繋がっています。
「共生」「メタボリズム」「中間領域」・・・といった、
様々に展開される彼の思想群は、
現在の世界のテーマにもなっているだけに、
改めて真摯に受け入れたいと思いました。



待ち合わせの時間より少し早めに到着

建物の入り口を入ると、
そこには空気がふわっと溜まりこんだような、
安定した巨大空間のロビーが存在していました。
まるで何もかもをそこに広く溜め込んでおいてくれるかのような安心感が
そこにはあるような気がする。
そんな建造物の心臓が突如と現れてくるのです。

どうやらそこは、黒川さんが「中間領域」だとおっしゃっていた場所だそうです。
以前に黒川さんとお話する機会のあった知人によると、そ
こは自然と人工物が共生する中間領域。人々は理解しないかもしれないが・・・。
とおっしゃっていたそうです。





私なりに共生を感じてみる。

ちょうど夕刻。建物を覆うガラスの壁面に、
小さなガラスが水平になってズラッと並ぶ。

そのガラスは、夕方の青山の森に消え行く夕日だけを、
建物の中に通している。

共生のために設けられた空間で、
伸びてくる影のシルエットだけがゆらりと動く。

きっと昼間は、強すぎてあからさまな陽の光を通さずに、
柔らかくなった橙の光だけを届けられる仕組みになっているのだろうか?

それが、自然と人工物との共に生きる空間の演出なのだろうか。

まるで、大事な母の母体に届く、
唯一認められた優しさのレベルの光だけを選別しているかのように。

その建築物に取り付けられたガラスの板は、
とても大事なものを守っているかのようだった。




共生。それは、生命を穏やかにする自然のエネルギーを、
人工物である建築が調節しながら届けてくれる、自然の産物の居場所なのかもしれない。
新国立美術館は、そんな感慨深い建築でした。

ちなみに黒川紀章展開催中です。入場無料ですので、東京にお立ち寄りの際は是非。
彼の思想と、円錐と曲線美の建築の謎が、少しだけ理解できるかもしれません。  

Posted by YM at 13:04Comments(0)TrackBack(0)建築の話題